愛媛経済レポート連載コラム

子供の言うこと、することにびっくり

2010.4.26

 5月のゴールデンウィークに久しぶりに鹿児島に帰ることにし、航空券を取ろうとしましたら全く割引がなく高額なので、先に妻と娘に行ってもらうことにしました。休みの日しか送迎ができないので、行きは4月29日にし、戻る予定の5月9日(日曜日)は私がセミナーで大阪出張のため12日(水曜日)に変更しました。1週間長く滞在するにもかかわらず往復の航空券が1万4千円も安くなりました。

 鹿児島では妻の姉の家族にお世話になる予定で、前回も娘と遊んだくれた甥っ子と姪っ子は、滞在が長くなることを喜んでくれると思ったのですが、意外にも12日よりも9日に帰る方がいいと言ってきました。理由を聞きましたら「12日は見送りができないので、9日に空港で見送りたい」とのことでした。子供なのに節目を大切にするものだなと感心しました。

 最近、子供の患者さんが多く、日々楽しい出来事が起きます。小2の女の子が「歯のメンテナンスとフッ素塗布」に来訪され、まずスタッフがメンテを行い、私が確認してからフッ素塗布を行うのですが、その日はかなり患者さんが多くすぐ行けず、10分後に行きましたら子供がイスの上でじっとしていました。不思議に思いそっと覗きましたら、なんとよだれを垂らして爆睡していました。お母さんに尋ねたところ、午前中遊びすぎたので疲れたのかなと言われました。子供の患者さんは大勢診てきましたが、歯医者で爆睡する子供は初めて体験しました。

 またある日は、おませな4歳の女の子が月1度のメンテに来院し、スタッフが今日も可愛いねと声をかけましたら、即座に「なんで知ってるの!」と返答がありました。子供たちにはいつも驚かされます。

娘が”立って歩いた”当たり前に感謝

2010.3.8

 早いもので娘も1歳2ヶ月になりまして、おぼつかないながらも家の中を歩いたり、食事も私たちと同じものを欲しがり自分で食べたがります。

 先日、家族でうどん屋さんに行きました。娘用にと、お皿に「うどんを短くしたもの・おにぎり・かぼちゃの天ぷらの中身」を並べました。娘は、まずうどんに手を伸ばし美味しそうに食べ、とれない時は直接口で取って食べます。次におにぎりを手に取り、指についたご飯粒も1本ずつ指を舐めながら食べます。最後にかぼちゃを手にして口に入れたのですが、あまり美味しくなかったのか、すぐ口から出し下に落しました。私たちが知らない振りをして見ていましたら、うどんを食べ、おにぎりを食べ、かぼちゃは食べる振りをして下に落す、ということを繰り返していました。「教えたことはないのに面白いことをする
なあ」と興味深く見ていたのですが、いつのまにかテーブルの下は「かぼちゃだらけ」で、片付けて帰りました。
 
 2月21日、そろそろ外を歩かせようと百貨店に靴を買いに行きました。12㎝のサイズの靴を買い、早速その場で履かせて立たせました。最初は違和感があったらしく歩こうとしませんでしたが、しばらくして急に歩き出しました。よほど嬉しかったのでしょうか、10分程休みなく歩き続けました。私も初めて
娘が懸命に歩く姿を見て嬉しくて涙が出そうでした。

 今回ふと思ったのですが、歩ける人にとって「歩く」ことは当たり前ですが、例えば車椅子に乗っている私の親友にとっては奇跡です。また、毎日入れ歯で困っている患者さんの治療を行っている私にとって、何不自由なく食生活を行えることは奇跡です。楽しい家族・優秀なスタッフ・素敵な患者さんに囲まれ日々当たり前に過ごしていますが、初心に戻り、当たり前のことに深く感謝したいと思います。

「入れ歯の師匠」が松山へ来てくれました

2010.2.8

 先日、私の開業祝いに「入れ歯の師匠」が1泊2日で福島からわざわざ来てくださいました。師匠は歯科で1番本を出版されている全国的に有名な先生なので大変感激しました。

 夜到着されたため飲みに行ったところ、その店のビールが師匠も私も驚くほどおいしかったので、理由をオーナーに聞きました。ビールを樽から出すそうで「最初の5杯はおいしくないから捨て、2日過ぎると鮮度が落ちるので3日目に余ったものは全て捨て樽をきれいに洗って再度同じことを繰り返しています」とさりげなく言われました。この不景気にそこまで徹底しているのかと感動しましたが、実際はビールを求めて多くのお客さんが来られるため、殆ど2日間で樽は空いてしまうそうです。

 翌日は当院を見学して頂き、伊予かすり会館・石手寺・道後温泉に行きました。道後温泉本館に2人でゆっくり入り、じゃこカツを頬張りながら道後商店街で買い物をしました。師匠のお土産の買い方は尋常でなく、お店の人に勧められたものや気に入ったものをまとめて大量に買い込みます。どうしてそのような買い方をするか聞きましたら、「たくさん買うとお店の人が喜び、お土産をもらった人も喜び、商品自体に魅力があればその人達がリピーターとなるので経済の流れが良くなり、皆が豊かになるよ」と言われました。心の広さに脱帽します。

 今まで師匠が他人から奢ってもらったのを見たことがなかったのですが、今回私が殆どお金を出させて頂き、男として認めて頂いたような気がしました。

 道後温泉から空港にお送りする車中で急に静かになったので、バックミラーごしに見ましたら師匠がいびきをかきながら熟睡していました。こんなに寛いでいる師匠を見たことないので、本当に嬉しく思いました。新年早々、たくさんのご褒美を貰った気分になりました。

10年後、20年後を考えて治療方針を錬る

2010.1.4

 11月9日に移転開業して早2ヶ月近くになりますが、場所が良いのか、想像以上に患者さんが来院され「本当に歯で困っている人が多いな」と実感します。

 たまたま開業の直前に、東京でセミナーに参加し、以前から尊敬していた先生と懇親会でじっくり話す機会を持てました。その先生は、とても笑顔が素敵な男性で、67歳、開業40周年のベテランです。「来週開業するのですが何かアドバイスいただけますか」と尋ねましたところ、「私は40年間一度も手を抜かずに患者さんに向き合ってきました。そのご褒美として今が人生最高に楽しいよ。先生も毎日手を抜かずに頑張れば、いずれ神様からご褒美が貰えるからね。治療方針を立てる時は、どうしたら10年後、20年後患者さんが快適に過ごせるかを考えた上で決めなさい」と言われました。私は今まで、10年後はともかく20年後まで考えて治療方針を決めていたかと振り返ると自信がなく、ショックを受けました。私は現在45歳で、70歳までの25年が歯科医師人生と考えています。このお年間、「どれだ
け真剣に患者さんに寄り添えるか」をテーマに全力で取り組んでいきたいと思います。

 じっくり治療をしたいので、予約は1人1時間と決め、初診の患者さんには必ず「どうしたら将来歯が残せるか」というセミナーを含め1時間位カウンセリングを行っています。皆さん、普段歯科医とゆっくり話す機会が無いようで、大変喜んでくださいますし、私も患者さんの事がよく分かるので楽しいです。お子さんの場合はお母さんにカウンセリングするのですが、納得して頂くと、ご本人や他の家族も来られることがあります。ご家族全員の歯を私にお任せいただけるのは、嬉しいと同時に責任重大で身が引き締まる思いです。

 患者さんから「産婦人科に来たみたいで癒される」と言われました。1度遊びに来ませんか。

「トラブル時こそ冷静に」を心に誓う

2009.12.7

 10月10日、東京でのセミナーに出張した時の話です。飛行機は18時10分発で、17時頃松山空港に着きました。珍しく大勢の人だかりがあり不思議に思っていましたら、掲示板に「3時頃小型機が胴体着陸を行い、滑走路が閉鎖されていて今の所発着に大幅な遅れが出る見込みです」と書いてありました。最初の内は困ったなと軽く見ていましたが、突然アナウンスが流れ「滑走路の回復のめどが立たないため全ての便は欠航します」とのことでした。東京・大阪・名古屋・福岡行の便がまだ残っており、かなりのお客さんが空港に待機していて、その人達が一斉に動いたため、大パニックが起きました。私もツアーで申し込んでいたため変更がきかずどうしようかと思い、受付カウンターに並んでいましたら、東京行きの70歳代と思われる男性が、興奮してカウンターの女性に「どうにかしろ!」と食って
かかっていました。小銭入れを投げつける人もいて、とても日本とは思えませんでした。

 私の番になり、カウンターの女性があまりに気の毒だったので、「あなた達のせいでないのに、怒り散らすのは失礼だよね」と声をかけましたら、突然女性が「ありがとうございます」と言いながら泣き出し、私ももらい泣きしてしまいました。私自身この後どうしていいか分からず彼女に聞きましたら「東京
から来た飛行機が1機だけあり、翌日のフライトの関係上どうしても羽田に戻す必要があります」と教えていただき、その場で予約を取りました。滑走路がきれいになる見通しもなく、飛ぶかどうかも分からず、ただ彼女の言葉を信じて待ちました。思いが通じたのか、18時半頃「滑走路がきれいになり飛行機のめどがたちました」とのアナウンス。自然に拍手が沸き起こりました。結局1時間程度の遅れで
済みましたが、先程怒っていた男性は機内に見当たりませんでした。

 今回の件で思ったのは、人間いざという時どのように対処するかが大切だということで
す。今後トラブルが起きた際には、冷静になり人には優しく接しようと心に誓いました。

ついに新しい病院が完成しました

2009.10.26

 鹿児島出身の私が愛媛初上陸し早6年が経ちました。今の病院は居抜き物件でしたが、6年間多くの患者さんに支えていただいたおかげで、夢にまで見た、夢のような新しい病院を建てることができました。伊予鉄道の土居田の駅の隣です。

 9月末に引き渡しがありました。いざ自分の病院になって、ゆっくり院内を歩き回ると、全てが新しく、また思い描いていた通りの癒しの空間になっていて、これまでの苦労が走馬灯のように蘇り涙が出てきました。

 今回の開業で一番頑張ったのは誰かと考えましたところ、いくら仕事とはいえ、猛暑の中、1つずつ丁寧にさくら歯科クリニックを作っていただいた建設業者の現場の方々という思いが強く、総勢20名集まっていただき、居酒屋で慰労会を行いました。聞けば、このような会はほとんど無いそうです。現場の方々同士も一緒に飲む機会があまりないようで、想像以上に盛り上がりました。皆さんとても良い人達でした。陰で支えていただいた人達とじっくり語らい飲み交わしていると、改めて感激で涙が出そうでした。私自身彼らを裏切らないようにきちんとした治療をしなければと身が引きしまる思いでした。

 これまで私が勤務してきた病院も新築という所はなく、歯科医師人生で初めて新しい病院で働くため、かなりドキドキ感があります。

 この1年を振り返りますと、去年の11月に44歳になり、12月13日には結婚12年目で女の子を授かり、父親1年生として日々奮闘し、仕事では新しいスタッフも迎え、10月には新しい病院ができました。子供を授かったことも奇跡ですし、自分の病院を持てるのも奇跡で、44歳にして第2の人生を真正面から謳歌しています。

 事前に時間をかけて、患者さんやスタッフたちと、新しい病院はどうあるべきか、話し合いを重ねてきました。その甲斐あって、従来には無いような「癒しの病院」ができたと自負しています。11月7・8日には内覧会を行いますので、興味のある方は1度足を運んでみてください。

フェリーで親子連れを見て思ったこと

2009.8.31

 先日、大分に仕事の用事があり三崎から朝7時のフェリーに乗りました。

 始発ということもあり、かなりお客さんが多く、その中に小さな子供たち4人と両親の6人家族が幸せそうに朝ごはんを食べていました。何気なく見ていますと、子供たちはお母さんが作ったラップに包まれたおにぎりと重箱に入っているおかずを美味しそうに頬張り、水筒に入っているお茶を飲んでいました。

 最初はただ楽しそうな家族だなと思って見ていましたが、突然不思議な思いが頭をよぎりました。「このお母さんは何時に起きたのだろう?」。私には8か月になる娘がいますが、外出しようと思うと準備に最低30分くらいはかかります。小さな子供たち4人の洋服の準備・6人分のおにぎりやおかずやお茶などの準備と考え始めると途方もなくやることが多く、時間がかかることは想像できます。

 今までそのように考えたことは1度もなく、突然気になったことに自分でも驚きましたが、妻の子育てを日々見ていて大変そうなので、何か少しでも協力してあげたいと無意識に考えているためかもしれません。

 当院のスタッフについても同様です。その働きぶりには満足し、感謝していますが、私が実際に目にしているのは、彼女たちの仕事の一部に過ぎません。私が見ていないプロセスでの様々な努力や工夫があってこそ、成果があるのだということに今更ながら気付いた次第です。

 人は、とかく自分が見たこと、聞いたことだけで物事を判断しがちですが、大切なことは意外と自分の知らないところにあるのかもしれないと思いました。

 娘が8か月になった日に突然「はいはい」をはじめ、驚きました。「この子も親の見ていない問に努力していたのだろうか」などと考えました。ここ最近、足を曲げたり伸ばしたりしてはいたのですが、今思えば、それが準備だったのかもしれません。

 私も娘のように、何事も出来るまで諦めず、また人が見ているかどうかにかかわらず、日々全力で努力して一歩ずつ技術力を高めていきたいと思います。

移転資金の融資が決まり皆さんに感謝

2009.7.20

 手狭になった病院を移転開業するための資金の融資を、銀行さんにお願いしておりました。

 私は鹿児島県出身の上、夫婦とも両親がおらず、周りの人からは「この不景気にそんな条件で融資してくれる銀行はないよ」と言われつつも、自分の診療方針と過去の売上・患者数・患者エリアなど、いろいろなデータを分かりやすく整理して、1行1行と真剣に向き合い、自分の思いを一所懸命伝えました。さすがに世の中は甘くなく、次々と断られましたが、ある銀行の担当者の方が、「先生の人間性を信用します」と融資を確約してくださいました。

 最初の銀行に相談を持ちかけてから4ヵ月が過ぎ、かなり長く感じましたが、最終的には自分を信用していただいた事に感激しています。銀行の担当者の方を裏切らないよう歯科医として今まで以上に人格と技術を高めていかなければ、と思います。

 今回の融資は、「困った患者さんを全力で救いなさい」という神様からの贈り物のような気もします。これからも、患者さんの声を謙虚に受け止め、できるだけ短期間に患者さんの不具合を解決していきます。

 当院は開院から5年半経ちました。今では約120人の患者さんが、美容室感覚で1月に1度の歯のメンテナンス」に来院し、自院を支えてくださっています。感謝の気持ちで一杯です。また、患者さんに常に快適さを提供しているスタッフにも感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 今回の融資の件で、大きな目標ができました。私のようにやる気があっても家庭事情などにより金銭面で困っている次世代の子供たちのために、将来「財団」を作り、陰ながらバックアップをしていくことです。

ベテランの経験を活かし、居心地の良い病院に

2009.6.15

 最近、飛行機に乗る機会が以前よりかなり増えました。月に2回ほど、東京や大阪で「歯の講習会」に参加するためです。

 客室乗務員というと若くて可愛い女性というイメージが私にはあったのですが、この間、東京からの帰りの飛行機では、平均年齢50歳代というベテランスタッフの方たちで、初めはかなり違和感を感じました。しかし、しばらくスタッフの動きを見ていますと、全く無駄がなく落ち着いていて、逆に居心地が良くなりました。近々、妻が5ヵ月の娘を連れて里帰りをするため、航空券の予約の仕方をスタッフに聞きましたら、丁寧に教えてくださった上に、しばらくして「お嬢さんにどうぞ」と赤ちゃん用の可愛い帽子をいただき、心遣いに感激しました。

 今の病院が手狭になったため、11月頃移転開業します。通常、新規開業の場合は「先生もスタッフもフレッシュでみんなで一から頑張ろう」という雰囲気ではないかと思います。ところが私の病院は、最近スタッフを増員したのですが、11月の移転開業時点で私45歳、スタッフ4人の平均年齢40歳(3人が子持ちのお母さん)とベテラン揃いです。若い男性が来院しにくいのではと心配しています(笑)。それはともかく、スタッフは皆人柄が穏やかで、かつ優秀なため、半年後には今までに無いような居心地の良い落ち着いた雰囲気の病院になると思います。

 患者さんがどのように感じるか気になりますし、私自身もベテランスタッフと働くのは初めてで、まだまだ戸惑いはありますが、多くの方が歯科医に対して抱く「できれば行きたくないところ」という印象を根底から覆すような「美容室や理容室のようにまた行きたくなる病院」を目指します。経験豊富なベテランスタッフに癒されたい方は、ぜひ一度ご来院ください。

矯正治療に向け、学習と体験の効果を実感

2009.5.4

 噛み合わせが悪いことが原因で体調が良くない患者さんが最近増えています。歯の矯正をしないと治せないため、3年前から「歯の矯正」の勉強を本格的に始めました。私自身、勉強のため、去年の10月から岡山の師匠に歯の矯正をしてもらっています。また、師匠の開く講習会にも参加しています。

 このほど師匠の勧めもあり、去年受けた基礎コース(2日間)を再受講しました。初日の講義が去年よりかなり分かり易くなっていましたので聞きましたら、「今まで何年も同じ資料を使っていたので根本から作り変えた」とのことでした。使い慣れているものを見直す機会はなかなかないものですが、これを機
に私も、患者さんへの説明に使用する資料をより分かりやすく作り直すことにしました。

 講習2日目も、去年と比べ想像以上に分かり易かったので、「やはり資料を作り直したのですか?」と聞きましたら、意外にも「全く変えていないよ」という答えでした。「あなたがしっかり勉強しているから理解力が上がったのだと思うよ」と嬉しい言葉を頂戴しました。

 講習会はこれまで10回以上受けてきました。矯正治療を行っていなくても、知らぬまに師匠と同じような治療方針を立てられるようになっていることに気付き「継続は力なり」を実感しました。また、矯正治療を行う先生たちの症例発表会に参加しましたが、先生たちが不安に思っていることは、実際に矯正治療を受けている私にとって体験済みのことばかりでした。患者さんに矯正治療を行う前に「まず自分が体験」という試みは、患者さんの気持ちが分かるだけでなく、私もまだ気付いていない色々なメリットがあるようです。