2021年7月

私の師匠となった患者さんたち!

2021.7.18

歯医者になって約30年になりますが、思い出深い患者さんが数人おられます。

その中でも強烈に覚えている3人を書かせていただきます。

1人目は、80代の総入れ歯の女性の患者さんです。「右下の糸切り歯が1本だけ残っていて何でも食べれていたのに、勝手に抜かれて何も食べれなくなった」というのが口癖でした。

レントゲンを見ると恐らくかなりグラグラしていた歯で、嚙むと痛みが出そうなので抜いて入れ歯を作る方が患者さんのためだと歯科医が判断し、抜歯したと思われます。

私が思うに「歯がある事が人としての尊厳であり、勝手に抜かれて奪われた事がショックである」ように感じました。それ以来患者さんの歯を抜く時は必ず納得しているか聞くようにしていますし、患者さんが迷う時は、抜けるまで待つようにしています。

2人目は、60代の感じの良い入れ歯の患者さんです。人が良さそうな患者さんだったので話しが盛り上がり患者さんの要望をできる限り取り入れることにしました。

不思議とスムーズに進み、入れ歯の嚙み合わせを全く調整することなく何でも食べることができました。その時患者さんに「前の歯医者は、話しが嚙み合わないから入れ歯も嚙み合わなかったが先生は、話しが嚙み合うから入れ歯も嚙み合う」と言われました。

上手いこと言うなと思いましたが、それ以来できる限り患者さんとは会話を大切にするようにしています。

3人目は、70代の女性の入れ歯の患者さんです。3世代で住んでいて、毎日お孫さんがお菓子をくれるそうです。入れ歯の調子が悪く食べれないので、毎回もらってはこっそりと捨てているそうでそれが辛いので、早く入れ歯で食べれるようにしてほしいとのことでした。

私もばあちゃん子だったので、恩返しのつもりでいつも以上に頑張りました。気持ちは伝わるようで、最短で何でも食べれるようになり、患者さんから「何でも食べれるので、自分から孫にお菓子をねだるようになり家庭円満になりました」と言っていただきました。

入れ歯治療は、状況によっていろんなドラマが生まれますね。

 

 

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